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【医師の英語】「難しい天秤です」医療英語ワンフレーズ#124

  • 医療英語ワンフレーズ

現代では、外国人患者さんに接する機会のある医療従事者の方も多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな医療従事者の方のために、医療英語の単語集や会話例文集を様々なシチュエーションごとにご紹介していきます。
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「難しい天秤です」を英語で言うと?

《例文1》
医師1 :I wonder if we should stop anticoagulation given recent GI bleeding.
(最近あった消化管出血を考えると、抗凝固薬をやめるべきなのか悩んでいます)
医師2 :It is a difficult balancing act between risks and benefits.
(それはリスクとベネフィットの難しい天秤ですよね)

《例文2》
The decision to proceed with the surgery requires a careful balancing act.
(手術に進むかの決断には注意深いバランスが必要です)

《例文3》
We need to think about a delicate balancing act between pain control and sedation.
(疼痛コントロールと鎮静の間で繊細な天秤を考える必要があります)

《解説》
医療現場では、相反する2つの事実を天秤に掛け、バランスを取らなければならないことはしばしばです。
治療の益と害、手術をすべきかどうか。
そんなときに、「対立する2つの間でバランスを取らなければならない=難しい天秤に掛けなければならない」
という状況に置かれます。
そういった際、患者さんへの説明、あるいは医療者同士の議論の場で有用な表現が“balancing act”です。

“balancing act”は、本来は「曲芸における綱渡り」を意味する言葉だそうです。
綱渡りは、絶妙なバランスを取りながら綱の上を渡る曲芸。
医療者にも医療上の絶妙なバランスを求められることがありますが、
そのようなバランスを取って決断していくことを“balancing act”という言葉で表現し、
「両立させること」「バランスを取ること」という意味を持ちます。

たとえば、冒頭の会話のシチュエーションはこのような感じです。

心房細動の既往があり、血栓症のリスクが高い患者に消化管出血が起こった。
血栓のリスクも、出血のリスクも高く、今後の抗凝固薬をどうすべきか…。
この血栓リスク、出血リスクの両者は難しい天秤だと思いますが、
それらを慎重に測りながら、どこかに線引きをして決断をしなければなりません。

そんなシチュエーションを表現するのに、このIt is a “balancing act”は最適な表現です。
一般英会話の教科書で見ることは少ないかもしれませんが、
医療現場ではよく登場する表現ですので、そのまま覚えてしまうとよいでしょう。


米国内科医山田悠史先生

この記事の執筆者
山田 悠史先生
マウントサイナイ医科大学 老年医学科 アシスタントプロフェッサー
慶應義塾大学医学部卒業
東京医科歯科大学医学部附属病院で研修。2015年に渡米し、米国内科専門医を取得。
現在マウントサイナイ大学病院老年医学・緩和医療科に所属。
NPO法人APSARA常務理事。2021年にめどはぶを設立、代表を務める。
近著:
最高の老後(2022)、健康の大疑問(2023)、老年医学のトビラ(2025)

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